リンツァートルテ 2

こんにちは。リンツァートルテ  の後半です。

リンツの駅を降りると 構内には
リンツァートルテ  の看板や、楽しいオーナメントがそこかしこに目にとまります。
駅のキオスクに寄ろうものなら「ねえ、お客さん、ユインドラックの
リンツァートルテ    、ご存知ですか?」と 聞かれる始末。
キオスクはその土地のちょっとしたインフォメーションでもありますので、まず始めに覗き込むのが
私流の旅の楽しみ方です。

さてキオスクの店員さんが教えてくれた コンディトライ  ユインドラック。
リンツァートルテの代名詞のようなお店です。
この店を…と言うよりは、リンツァートルテ    でリンツを有名にしたのが この店のオーナー パティシエのヨハン・コンラッド・フォーゲル。(1796〜1883)
彼はバイエルンに生まれ、26才の時にこの店で働き始め、翌年にはこの店の女主人(彼女は未亡人でしたので)と結婚。リンツァートルテの大量生産化という当時としては画期的な手法で成功をおさめ、世界中にその名を知らしめた人物です。
…と、ここまでは、「才能あるパティシエのサクセスストーリー」、と思われるかも知れませんが、彼はリンツ市の社会保障制度を充実させ、高齢者の年金制度、未亡人の社会保障、貧しい人々への支援などに、大きく携わりました。
そればかりか彼が49才の時にはプロテスタント教会の責任者に選出され、教会や学校の建設に助力を惜しみませんでした。
実に出来た人物ですね。
こうして彼はリンツ市から名誉市民の称号を与えられたばかりでなく、彼が70才の時には通りに「ヨハン・コンラッド・フォーゲル通り」
と命名される栄誉に授かりました。

あ、ごめんなさい。彼のスィーツ以外の功績をお伝えしたくてつい、本題から逸れてしまいました。

確かにこのトルテ、オリジナルレシピは2005年に発見されましたが、前にも申し上げました様に、古代エジプト時代にはもうすでに類似したものが存在していたくらいですので、フォーゲルは長い年月をかけ、
試行錯誤の末にこの現在あるトルテを完成させたというのが真相のようです。   



ここでもう一度寄り道をしても良いですか?
リンツァートルテ    の話をすると必ず思い出してしまうのが、スイス  ザンクト・ガレンの銘菓、クロスター・トルテ(修道院のトルテ)。
リンツァートルテ に良く似ていますが、甘さは少々控えめで、生地にココアが入っています。
ザンクト・ガレン修道院は719〜1805年迄 実在し、独自のの製菓・製パン工房もありましたので、かなり昔からこのクロスタートルテを作っていたと思われますが、悲しいかな、このレシピの記録が無いため、「世界最古のトルテ」のタイトルは、やはりリンツァートルテに
軍配が上がってしまったようですが、このトルテについてはまた改めてお話いたしますね。

最後に人々のリンツァートルテ  に対する関心度を表している音楽を
ご紹介します。
その名もずばり、オペレッタ「リンツァートルテ    」。
フォーゲルと同郷のバイエルン出身、ルードヴィッヒ・シュミットゼーダーが作曲し、主人公はフォーゲル、というものです。    こう見てみると、彼  フォーゲルはリンツァートルテ だけではなく、その人柄も
愛されていたようですね。
そして絵画では、リンツのノルディコ博物館に、大きなリンツァートルテ を抱えるように持つ女性の絵がありますので、ご興味がありましたら 是非ご覧ください。

香ばしい生地の間からルビーのように輝く赤すぐりのジャムが顔をのぞかせ、人々の食指を誘うリンツァートルテ    。
なんだか急に作りたくなってしまいました。
出来立てよりも、2〜3日後が食べごろですので  グッと我慢してくださいね。
              
                  ではまた。